災害応援派遣 〜熊本の被災地を訪ねて〜

熊本県は氷川町、特別養護老人ホーム 早尾園様へ応援派遣として訪れました。

電気や水道といったライフラインは復興し、道路や街並みを見れば、一見すると「平穏な日常」が戻ってきたかのように感じられます。まち全体が以前の活力を取り戻している姿には、並々ならぬ努力の跡が偲ばれます。

しかし、一歩踏み込んで「点」の視点で個々の生活を見つめ直してみると、状況は大きく異なります。

全体としての復興が進む一方で、個人の暮らしの単位に目を向ければ、まだまだ解決されていない痛みが山積しています。「平面」の復興と「点」の現実の間には、大きなギャップが存在するのです。

そんな道中で、地震の影響で今も盛り上がったままの歩道を歩く、小学生たちの姿を目にしました。でこぼこの道を、彼らは無邪気にはしゃいでいました。

その姿を見た瞬間、胸がギュッと締め付けられ、思わず涙が出そうになりました。大人が「被災の爪痕」として直視しなければならない不便さや痛みの残る場所で、子どもたちはそこに自分たちの日常を見出し、懸命に笑っていました。その無邪気さの裏にある背景を思うと、言葉を失うほどの感情に心が激しく揺さぶられました。

今回、私は早尾園への応援派遣を通じて、実際の介護現場にも身を置かせていただきました。そこで実践されている「ユニットケア」は、まさにマクロな全体支援ではなく、一人ひとりの利用者に向き合うミクロな「点」のケアそのものです。

個人の尊厳を守り、その人らしい生活リズムや細やかなこだわりを大切にするユニットケアの現場には、利用者の方々が穏やかに、そして人間らしく生きるための確かな営みがあります。街全体の復興がどれほど進んでも、結局のところ、私たちが向き合うべき本質はいつだって「目の前の一人の生活」にほかにありません。

失われたものの大きさに思いを馳せると同時に、子どもたちの生命力や、現場で奮闘するスタッフたちの姿に、改めて胸を打たれます。

全体を見渡す広い視野を持ちながら、目の前の一人ひとりの「点」に寄り添い続けること。そして、痛みを抱えながらも前を向く人々の歩みに、心から寄り添い続けること。

日常が戻ってきたように見えるからこそ見えにくくなる現実と、その裏にある一人ひとりの物語にしっかりと目を向け、本当の意味での心の復興に向けた歩みを、これからも地道に続けていきたいと思います。

社会福祉法人 成和会 鍋谷